テールピースの選択と調整―演奏家が知っておくべきこと

テールピースは、ヴァイオリン族の楽器の音の形成に重要な役割を果たします。理想的な音のためのセットアップには、テールピースの木材の種類とその長さと厚さの選択を注意深く考慮する必要があります。

まず、材料の選択から。テールピース用の木材の種類を選択するときには、個別の楽器の基本的な音質を考慮する必要があります。エボニーやペルナンブコのように重量密度の高い木材は、ツゲのようなより柔らかく軽い木材と比べて振動が直に伝わりやすいと言えます。したがって、楽器が鼻にかかった音質を持ち、音がさらに開く必要がある場合は、エボニーやペルナンブコなどのより堅い木材が相性がよく、音質が向上する傾向があります。逆に、楽器が明るすぎる場合、ツゲのような柔らかい木材が相性が良いかもしれません。個人的には、エボニーやペルナンブコなどの高密度の木材を使用すると、テールピースが重くなりすぎないように適切な配慮がなされている限り、音質や倍音の豊かさに一般的にプラスの効果があると考えています。

テールピースの重さは、その楽器の反応の良さや音質にとって重要な要素であると個人的に考えています。これまでの経験上、バイオリン・ビオラ・チェロのうち、どちらかというとビオラとチェロがよりテールピースの重量によって大きく音が影響される傾向があります。一般に、ビオラとチェロの場合には、軽めのテールピースが良い音につながることが多いです。選ばれた木材の種類を変えずに、より軽い重量を得るには、通常、テールピースの下側をノミで慎重にえぐります。この作業を上手に行えば、強くかつ軽量のテールピースが得られ、振動の伝達力と見た目の美しさを両立できます。実際に試すと、このカスタマイズされたテールピースからは、より強く集中したサウンドと素早い反応が得られることに気付くはずです。しかし、この軽量化されたテールピースをもともと音の明るい楽器に合わせると、明るすぎて硬い音になり、かえってマイナスの影響を与えることがあります。この軽量化の作業を行う際、テールピースが薄くなりすぎないように気を付ける必要があります。

経験の浅い職人によって薄く削られすぎたテールピースは、強度的に心配です。私の場合、テールピースの強度の観点から、常に木目の特性や、構造的に肉厚を残すべき部分と薄くしてもよい部分とがきちんと区別されているかに注意を払っています。

最後に、駒からテールピースまでの弦の長さは、楽器による倍音発声にとって非常に重要な要素です。このアフターレングスの適切なチューニングは、テールピースの取り外しとセットアップを繰り返すことでその楽器にとって理想的な状態を追い込みます。短すぎるテールピースが使用されている楽器をよく見かけますが、これだと楽器の潜在力を発揮させることはできません。このような場合は、適切な長さにカスタマイズされたテールピースを使用する必要があります。多くの楽器職人は、テールピースの最適化による楽器性能の改善が、その手間のわりにはあまり大きくない、と考えているようで、最適化されていない楽器が多いのはこれが理由と思われます。確かに改善幅が小さい場合もありますが、それでも真剣な演奏家としてはわずかな改善であってもそれを追及する価値があるのではないでしょうか。

ossiaでは、希少で美しい木材を使用した最高品質のイタリア製ハンドメイドテールピースを主に使用しています。お客様からのご意見も参考にしながら、音の特性と色調など見た目を楽器とマッチングさせる観点から使用するテールピースを選びます。その上で、個別の楽器に最良な状態でマッチするよう、最終的な微調整と手彫りを行い、楽器の潜在能力を最大限に引き出します。